Japanische Klassiker mit Furigana
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くさめいきゅう
草迷宮
泉 鏡花
Lesen Sie 草迷宮 (くさめいきゅう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.733 Zeichen · 142 Bildschirme
「わっ、」
と叫んだ。
二十一
「はじめの夜は、ただその手毬が失せましただけで、別に変った事件も無かったでございますか。」
と、小次郎法師の旅僧は法衣の袖を掻合せる。
障子を開けて縁の端近に差向いに坐ったのは、少い人、すなわち黒門の客である。
障子も普通よりは幅が広く、見上げるような天井に、血の足痕もさて着いてはおらぬが、雨垂が伝ったら墨汁が降りそうな古びよう。巨寺の壁に見るような、雨漏の痕の画像は、煤色の壁に吹きさらされた、袖のひだが、浮出たごとく、浸附いて、どうやら饅頭の形した笠を被っているらしい。顔ぞと見る目鼻はないが、その笠は鴨居の上になって、空から畳を瞰下ろすような、惟うに漏る雨の余り侘しさに、笠欲ししと念じた、壁の心が露れたものであろう――抜群にこの魍魎が偉大いから、それがこの広座敷の主人のようで、月影がぱらぱらと鱗のごとく樹の間を落ちた、広縁の敷居際に相対した旅僧の姿などは、硝子障子に嵌込んだ、歌留多の絵かと疑わるる。
「ええ、」
と黒門の年若な逗留客は、火のない煙草盆の、遥に上の方で、燧灯を摺って、静に吸いつけた煙草の火が、その色の白い頬に映って、長い眉を黒く見せるほど室の内は薄暗い。