Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くさもみじ

荷風随筆集(下)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(下) (くさもみじ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.512 Zeichen · 63 Bildschirme

Aozora Bunko

家は馬道辺で二階を人に貸して家賃の足しにしていた。おかみさんはまだ婆さんというほどではなく、案外垢抜けのした小柄の女で、上野広小路にあった映画館の案内人をしているとの事であった。爺さんはいつでも手拭を後鉢巻に結んでいるので、禿頭か白髪頭か、それも楽屋中知るものはない。腰も曲ってはいなかったが、手足は痩せ細り、眼鏡をかけた皺の多い肉の落ちた顔ばかりを見ると、もう六十を越していたようにも思われた。夏冬ともシャツにズボンをはいているばかり。何をしていたものの成れの果やら、知ろうとする人も、聞こうとする人も無論なかったが、さして品のわるい顔立ではなかったので、ごろつきでも遊び人でもなく、案外堅気の商人であったのかも知れない。

オペラ館の風呂場は楽屋口のすぐ側にあった。楽屋口には出入する人たちがいつも立談をしていた。他の芝居へ出ているものや、地方興行から帰って来た人たちが、内のものを呼び出して、出入口の戸や壁に倚りかかって話をしている事もあるし、時候が暑くなると舞台で使う腰掛を持出して、夜昼となく大勢交る交るに腰をかけて、笑い興じていることもあったが、しかし爺さんがその仲間に入って話をしている事は滅多になかった。