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Japanische Klassiker mit Furigana

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きくづきよ

菊月夜

山本 周五郎

Lesen Sie 菊月夜 (きくづきよ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.129 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

信三郎は半刻ちかく待たされた。そして出て来た忠左衛門は、客を下座に、おのれは悠然と床を背にして坐った。六十に近い年齢とはみえぬ精悍な肉体をもち、眉の濃い、唇の厚い、意志そのものといった相貌である、生麻の帷子の着ながしで袴も着けていない、おそらく酒を呑んでいたのだろう、横鬢から額へかけて赤くなっているし、ときどき無遠慮に酒気を吐いた。

「まだ残暑がきついのう」彼は坐るとすぐにそう云った。「なんの用じゃな」

信三郎は黙っていた。

「さきごろ召出しの使がまいったようだが、その用件かな」

「…………」

「どうしたんじゃ、舌でも痺れたか」

じろっとこちらへ眼を向けたとき、信三郎はしずかなこえで、

「高力忠左衛門、座が高いぞ」と云った。忠左衛門はくっと眼を細めた。大きく瞠らいたよりも鋭く、蛇のような感じのする眼つきだった。……老人は十年にわたって不動の権勢をにぎり、かつてなにものにも頭を下げたことがない、すべての者が彼の頤使に従い、鞠躬としてその命を待った、ひとたびその眼でねめつけられれば、あえて面をあげ得る者は一人としてなかった、しかし、今、ほとんど見知らぬ青年ともいうべき疋田信三郎、孫にも近い若き大目附が、眼をあげて彼を見据え、姓名を呼び捨てにし『座が高い』