Japanische Klassiker mit Furigana
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おちむしゃにっき
落武者日記
山本 周五郎
Lesen Sie 落武者日記 (おちむしゃにっき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.460 Zeichen · 23 Bildschirme
そして、ぴしぴしと竹の折れる音に続いて、ふいに右手で銃声が起った。
だあん! だあん! だあん!
祐八郎は思わず足を止めた。そして、押し包んでくる物音の方角を計ると、とっさに身をひるがえして、藪の疎らになっている一点へと走りだした。
だあん! だあん!
めくら撃ちに射たてる銃声とともに、竹林を走る弾丸の、からからという乾いた音が、祐八郎の左右を襲った。
――くそっ。
彼は夢中で駈けた。
藪が尽きて、畑地が現われた。それから雑木林の丘を越えると、ふたたび藪につきあたった。祐八郎は自分の体を叩きこむように、その藪の中へとびこんで行った。
どのあたりで敵をひきはなしたか分らないが、とにかく追跡の手を逃れたことはたしかだった。かなり遠く、それもずっと右のほうで銃声が聞えたきりで、あたりはひっそりと物音もない。
――もう大丈夫だ。
そう思うと同時に、疾走して来た疲れと、胸膜をつきやぶりそうな息苦しさに堪えかね、彼はそこへあおむけさまにうち倒れた。そしてしばらくのあいだはただ、恐ろしい息苦しさと闘うだけが精いっぱいだった。
かなり長い刻が経った。
呼吸が少しずつ鎮まってくるにつれて痺れるような全身の疲れが、うち勝ちがたい力で彼をとろとろと眠らせた。