Japanische Klassiker mit Furigana
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おちむしゃにっき
落武者日記
山本 周五郎
Lesen Sie 落武者日記 (おちむしゃにっき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.460 Zeichen · 23 Bildschirme
そう思って、祐八郎と義兵衛は落ちのびて来たのだ。
「そうだ、こうしてはいられない」
彼は身を起した。
主君を捜さなければならぬ。佐和山城へ急がなければならぬ……。体は綿屑のように疲れていた。骨の節々が砕けそうに痛む、饑餓と渇きで、眼が昏むようだった。
彼は藪を分けて歩きだした。西へ、ただ西へ向って、歩いた。
うしろから出た月が、いつかしら前へ廻った。下枝や草の葉に、露が光りはじめた。林を通りぬけ、丘へ登り、畑を歩いた、溝を渉った。やがて空が白みはじめてきた。
祐八郎はふと、ぎょっとして足を停めた。すぐ眼の前に、木の香も新しい高札が立っているのをみつけたのだ。彼は近寄ってみた。
急度申遣事
一、石田治部、備前宰相、島津、三人、捕え来たるにおいては、御引物のためその所の物なり、永代無役に下さるべきむね御掟候こと。
一、右両三名とらえ候こと成らざるにおいては討果し申すべく候、当座の引物として金子百枚くださるべきむね、仰せ出でられ候こと。
一、その谷中差送り候に於ては、路次有りように申上ぐべく候、隠し候においては、その者のことは申すに及ばず、その一類、一在所、曲事に仰付けらるべく候こと。