Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
京都へ来てから大変丈夫になった。来たては随分蒼い顔をしてね、そうして何だか始終おどおどしていたようだが、馴れるとだんだん平気になって……」
「性質が柔和いんですよ」
「柔和いんだよ。柔和過ぎるよ。――でも卒業の成績が優等で銀時計をちょうだいして、まあ結構だ。――人の世話はするもんだね。ああ云う性質の好い男でも、あのまま放って置けばそれぎり、どこへどう這入ってしまうか分らない」
「本当にね」
明かなる夢は輪を描いて胸のうちに回り出す。死したる夢ではない。五年の底から浮き刻りの深き記憶を離れて、咫尺に飛び上がって来る。女はただ眸を凝らして眼前に逼る夢の、明らかに過ぐるほどの光景を右から、左から、前後上下から見る。夢を見るに心を奪われたる人は、老いたる親の髯を忘れる。小夜子は口をきかなくなった。
「小野は新橋まで迎にくるだろうね」
「いらっしゃるでしょうとも」
夢は再び躍る。躍るなと抑えたるまま、夜を込めて揺られながらに、暗きうちを駛ける。老人は髯から手を放す。やがて眼を眠る。人も犬も草も木も判然と映らぬ古き世界には、いつとなく黒い幕が下りる。小さき胸に躍りつつ、転りつつ、抑えられつつ走る世界は、闇を照らして火のごとく明かである。