Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
そうか」
「阿父様」
「何だね」
「小野さんは御変りなさいましたね」
「変った?――ああ大変立派になったね。新橋で逢った時はまるで見違えるようだった。まあ御互に結構な事だ」
娘はまた下を向いた。――単純な父には自分の云う意味が徹せぬと見える。
「私は昔の通りで、ちっとも変っていないそうです。……変っていないたって……」
後の句は鳴る糸の尾を素足に踏むごとく、孤堂先生の頭に響いた。
「変っていないたって?」と次を催促する。
「仕方がないわ」と小さな声で附ける。老人は首を傾けた。
「小野が何か云ったかい」
「いいえ別に……」
同じ質問と同じ返事はまた繰返される。水車を踏めば廻るばかりである。いつまで踏んでも踏み切れるものではない。
「ハハハハくだらぬ事を気にしちゃいけない。春は気が欝ぐものでね。今日なぞは阿父などにもよくない天気だ」
気が欝ぐのは秋である。餅と知って、酒の咎だと云う。慰さめられる人は、馬鹿にされる人である。小夜子は黙っていた。
「ちっと琴でも弾いちゃどうだい。気晴に」
娘は浮かぬ顔を、愛嬌に傾けて、床の間を見る。軸は空しく落ちて、いたずらに余る黒壁の端を、竪に截って、欝金の蔽が春を隠さず明らかである。