Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
雨に風に散り後れて、八重に咲く遅き香を、夜に懸けん花の願を、人の世の灯が下から朗かに照らしている。朧に薄紅の螺鈿を鐫る。鐫ると云うと硬過る。浮くと云えば空を離れる。この宵とこの花をどう形容したらよかろうかと考えながら、小野さんは二人を待ち合せている。
「どうも怖ろしい人だね」と追いついた孤堂先生が云う。怖ろしいとは、本当に怖ろしい意味でかつ普通に怖ろしい意味である。
「随分出ます」
「早く家へ帰りたくなった。どうも怖しい人だ。どこからこんなに出て来るのかね」
小野さんはにやにやと笑った。蜘蛛の子のように暗い森を蔽うて至る文明の民は皆自分の同類である。
「さすが東京だね。まさか、こんなじゃ無かろうと思っていた。怖しい所だ」
数は勢である。勢を生む所は怖しい。一坪に足らぬ腐れた水でも御玉杓子のうじょうじょ湧く所は怖しい。いわんや高等なる文明の御玉杓子を苦もなくひり出す東京が怖しいのは無論の事である。小野さんはまたにやにやと笑った。
「小夜や、どうだい。あぶない、もう少しで紛れるところだった。京都じゃこんな事はないね」
「あの橋を通る時は……どうしようかと思いましたわ。