Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
押されるものは出る気がなくても前へのめりたがる。おとなしく時機を待つ覚悟を気長にきめた詩人も未来を急がねばならぬ。黒い点は頭の上にぴたりと留っている。仰ぐとぐるぐる旋転しそうに見える。ぱっと散れば白雨が一度にくる。小野さんは首を縮めて馳け出したくなる。
四五日は孤堂先生の世話やら用事やらで甲野の方へ足を向ける事も出来なかった。昨夜は出来ぬ工夫を無理にして、旧師への義理立てに、先生と小夜子を博覧会へ案内した。恩は昔受けても今受けても恩である。恩を忘れるような不人情な詩人ではない。一飯漂母を徳とすと云う故事を孤堂先生から教わった事さえある。先生のためならばこれから先どこまでも力になるつもりでいる。人の難儀を救うのは美くしい詩人の義務である。この義務を果して、濃やかな人情を、得意の現在に、わが歴史の一部として、思出の詩料に残すのは温厚なる小野さんにもっとも恰好な優しい振舞である。ただ何事も金がなくては出来ぬ。金は藤尾と結婚せねば出来ぬ。結婚が一日早く成立すれば、一日早く孤堂先生の世話が思うように出来る。――小野さんは机の前でこう云う論理を発明した。
小夜子を捨てるためではない、孤堂先生の世話が出来るために、早く藤尾と結婚してしまわなければならぬ。