Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
細い杖は地に着くがごとく、また地を離るるがごとく、立つと思えば傾むき、傾むくと思えば立ち、無限の空間を刻んで行く。光る靴は突き込んだ頭に薄い泥を心持わるく被ったまま、遠慮勝に門内の砂利を踏んで玄関に掛かる。
小野さんが玄関に掛かると同時に、藤尾は椽の柱に倚りながら、席に返らぬ爪先を、雨戸引く溝の上に翳して、手広く囲い込んだ庭の面を眺めている。藤尾が椽の柱に倚りかかるよほど前から、謎の女は立て切った一間のうちで、鳴る鉄瓶を相手に、行く春の行き尽さぬ間を、根限り考えている。
欽吾はわが腹を痛めぬ子である。――謎の女の考は、すべてこの一句から出立する。この一句を布衍すると謎の女の人生観になる。人生観を増補すると宇宙観が出来る。謎の女は毎日鉄瓶の音を聞いては、六畳敷の人生観を作り宇宙観を作っている。人生観を作り宇宙観を作るものは閑のある人に限る。謎の女は絹布団の上でその日その日を送る果報な身分である。
居住は心を正す。端然と恋に焦れたもう雛は、虫が喰うて鼻が欠けても上品である。謎の女はしとやかに坐る。六畳敷の人生観もまたしとやかでなくてはならぬ。
老いて夫なきは心細い。