Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
一面に揚る泥の濃きうちに、幽かなる朱いものが影を潜めて行く。温い水を背に押し分けて去る痕は、一筋のうねりを見せて、去年の蘆を風なきに嬲る。甲野さんの日記には鳥入雲無迹、魚行水有紋と云う一聯が律にも絶句にもならず、そのまま楷書でかいてある。春光は天地を蔽わず、任意に人の心を悦ばしむ。ただ謎の女には幸せぬ。
「何だって、あんなに跳ねるんだろうね」と聞いた。謎の女が謎を考えるごとく、緋鯉もむやみに跳ねるのであろう。酔狂と云えば双方とも酔狂である。藤尾は何とも答えなかった。
浮き立ての蓮の葉を称して支那の詩人は青銭を畳むと云った。銭のような重い感じは無論ない。しかし水際に始めて昨日、今日の嫩い命を托して、娑婆の風に薄い顔を曝すうちは銭のごとく細かである。色も全く青いとは云えぬ。美濃紙の薄きに過ぎて、重苦しと碧を厭う柔らかき茶に、日ごとに冒す緑青を交ぜた葉の上には、鯉の躍った、春の名残が、吹けば飛ぶ、置けば崩れぬ珠となって転がっている。――答をせぬ藤尾はただ眼前の景色を眺める。鯉はまた躍った。
母は無意味に池の上をていたが、やがて気を換えて
「近頃、小野さんは来ないようだね。