Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
と誘い込むように片足を後へ引いた。着物はあらい縞の銘仙である。
「ありがとう」
「どうぞ」
「どこへ行ったんです」と甲野さんは壁に向けた顔を、少し女の方へ振り直す。後から掠めて来る日影に、蒼い頬が、気のせいか、昨日より少し瘠けたようだ。
「散歩でしょう」と女は首を傾けて云う。
「私も今散歩した帰りだ。だいぶ歩いて疲れてしまって……」
「じゃ、少し上がって休んでいらっしゃい。もう帰る時分ですから」
話は少しずつ延びる。話の延びるのは気の延びた証拠である。甲野さんは粗柾の俎下駄を脱いで座敷へ上がる。
長押作りに重い釘隠を打って、動かぬ春の床には、常信の雲竜の図を奥深く掛けてある。薄黒く墨を流した絹の色を、角に取り巻く紋緞子の藍に、寂びたる時代は、象牙の軸さえも落ちついている。唐獅子を青磁に鋳る、口ばかりなる香炉を、どっかと据えた尺余の卓は、木理に光沢ある膏を吹いて、茶を紫に、紫を黒に渡る、胡麻濃やかな紫檀である。
椽に遅日多し、世をひたすらに寒がる人は、端近く絣の前を合せる。乱菊に襟晴れがましきを豊なる顎に圧しつけて、面と向う障子の明なるを眩く思う女は入口に控える。