Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
「どこに」と暖い顎を延ばして向を眺める。
「あすこに。――そこからは見えない」
糸子は少し腰を上げた。長い袖をふらつかせながら、二三歩膝頭で椽に近く擦り寄って来る。二人の距離が鼻の先に逼ると共に微かな花は見えた。
「あら」と女は留る。
「奇麗でしょう」
「ええ」
「知らなかったんですか」
「いいえ、ちっとも」
「あんまり小さいから気がつかない。いつ咲いて、いつ消えるか分らない」
「やっぱり桃や桜の方が奇麗でいいのね」
甲野さんは返事をせずに、ただ口のうちで
「憐れな花だ」と云った。糸子は黙っている。
「昨夜の女のような花だ」と甲野さんは重ねた。
「どうして」と女は不審そうに聞く。男は長い眼を翻えしてじっと女の顔を見ていたが、やがて、
「あなたは気楽でいい」と真面目に云う。
「そうでしょうか」と真面目に答える。
賞められたのか、腐されたのか分らない。気楽か気楽でないか知らない。気楽がいいものか、わるいものか解しにくい。ただ甲野さんを信じている。信じている人が真面目に云うから、真面目にそうでしょうかと云うよりほかに道はない。
文は人の目を奪う。巧は人の目を掠める。質は人の目を明かにする。