Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme

Aozora Bunko

窓掛の隙間から硝子へ顔を圧しつけて、外を覗くと扇骨木の植込を通して池が見える。棒縞の間から横へ抜けた波模様のように、途切れ途切れに見える。池の筋向が藤尾の座敷になる。甲野さんは植込も見ず、池も見ず、芝生も見ず、机に凭ってじっとしている。焚き残された去年の石炭が、煖炉のなかにただ一個冷やかに春を観ずる体である。

やがて、かたりと書物を置き易える音がする。甲野さんは手垢の着いた、例の日記帳を取り出して、誌け始める。

「多くの人は吾に対して悪を施さんと欲す。同時に吾の、彼らを目して凶徒となすを許さず。またその凶暴に抗するを許さず。曰く。命に服せざれば汝を嫉まんと」

細字に書き終った甲野さんは、その後に片仮名でレオパルジと入れた。日記を右に片寄せる。置き易えた書物を再び故の座に直して、静かに読み始める。細い青貝の軸を着けた洋筆がころころと机を滑って床に落ちた。ぽたりと黒いものが足の下に出来る。甲野さんは両手を机の角に突張って、心持腰を後へ浮かしたが、眼を落してまず黒いしたたりを眺めた。丸い輪に墨が余ってぱっと四方に飛んでいる。青貝は寝返りを打って、薄暗いなかに冷たそうな長い光を放つ。