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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme

Aozora Bunko

いざと云えば、突っかい棒に、尻を挙げるための、膝頭に揃えた両手は、雪のようなカフスに甲まで蔽われて、くすんだ鼠縞の袖の下から、七宝の夫婦釦が、きらりと顔を出している。

「まあ御緩くりなさい。母が帰っても別に用事はないんですから」と女は帰った人を迎える気色もない。男はもとより尻を上げるのは厭である。

「しかし」と云いながら、隠袋の中を捜ぐって、太い巻煙草を一本取り出した。煙草の煙は大抵のものを紛らす。いわんやこれは金の吸口の着いた埃及産である。輪に吹き、山に吹き、雲に吹く濃き色のうちには、立ち掛けた腰を据え直して、クレオパトラと自分の間隔を少しでも詰める便が出来んとも限らぬ。

薄い煙りの、黒い口髭を越して、ゆたかに流れ出した時、クレオパトラは果然、

「まあ、御坐り遊ばせ」と叮嚀な命令を下した。

男は無言のまま再び膝を崩す。御互に春の日は永い。

「近頃は女ばかりで淋しくっていけません」

「甲野君はいつ頃御帰りですか」

「いつ頃帰りますか、ちっとも分りません」

「御音信が有りますか」

「いいえ」

「時候が好いから京都は面白いでしょう」

「あなたもいっしょに御出になればよかったのに」