Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
「藤尾、藤尾」と御母さんはしきりに呼ぶ。
「失礼ですがちょっと御免蒙ります。――なにまだ伺いたい事があるから待っていて下さい」
藤尾は立った。男は六畳の座敷に取り残される。平床に据えた古薩摩の香炉に、いつ焼き残したる煙の迹か、こぼれた灰の、灰のままに崩れもせず、藤尾の部屋は昨日も今日も静かである。敷き棄てた八反の座布団に、主を待つ間の温気は、軽く払う春風に、ひっそり閑と吹かれている。
小野さんは黙然と香炉を見て、また黙然と布団を見た。崩し格子の、畳から浮く角に、何やら光るものが奥に挟まっている。小野さんは少し首を横にして輝やくものを物色して考えた。どうも時計らしい。今までは頓と気がつかなかった。藤尾の立つ時に、絹障のしなやかに、布団が擦れて、隠したものが出掛ったのかも知れぬ。しかし布団の下に時計を隠す必要はあるまい。小野さんは再び布団の下を覗いて見た。松葉形に繋ぎ合せた鎖の折れ曲って、表に向いている方が、細く光線を射返す奥に、盛り上がる七子の縁が幽かに浮いている。たしかに時計に違ない。小野さんは首を傾けた。
金は色の純にして濃きものである。富貴を愛するものは必ずこの色を好む。