Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にじのはし

虹の橋

久生 十蘭

Lesen Sie 虹の橋 (にじのはし) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.038 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

「それゃね、無理強いするようなことでもないわ……悪いけど、もうひとつ、おねがいがあるのよ。アパートの前に、グリ公を待たせてあるの。一晩だけ、ここへ寝かしてくれないかしら」

「こんな暑っくるしいところで寝なくとも、六甲か和歌浦か、涼しいところへ行ったらどうなのよ」

「グリ公は宝塚へ行こうというんだけど、今夜は、二人っきりになるのは困るの」

できそくないの木像のような妙にギョロリとした顔をしているので、グリ眼のグリさんで通っている。千里山に住んでいる若槻という株屋の息子で、東京の医大を出て関西医大でインターンをやっているということだったが、毎夜のように病院を抜けだしてきて、「よっちゃん」に入りびたっている。関西人にはめずらしく口の重い、掴みどころのないような男で、どういうつもりか、いつも本を抱えてやってきて、女給たちに読め読めとすすめる癖がある。

春の終りごろ、この小説の中に、君のようなひとがいる。読んでみろよと、「モンパルナスのビュビュ」という本をあさひにおしつけた。あら、そうなの。じゃ、お借りするわねといったが、読む気などはなかった。持って帰ったなりで机の下に放りこんでおいたが、風邪をひいて三日ばかり寝込んだとき、思いだしてひっぱりだしてみた。