Japanische Klassiker mit Furigana
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たこのごときもの
蛸の如きもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 蛸の如きもの (たこのごときもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.085 Zeichen · 21 Bildschirme
なにしろ、薄暗い河岸ぷちのことだ。
虚勢を張って、蛸を釣ってるんだ、と答えたが、小僧は笑いもしない。
「こんなとこ、蛸なんかいるものか。鯉ならいるよ。おじさん、鯉を釣ってるのかい。」
これは気に入った。立ち上り、うまいことを言うほうびだと、百円札を一枚差出すと、小僧は俺の顔をじろじろ眺め、紙幣を引ったくり、ありがとう、声といっしょに消えてしまった。
これも、幻影であろうか。無償の行為だ。胸がすーっとした。毒気がぬけたのだ。
河岸ぷちを離れ、何処に行くという当はないが、も少し歩くことだ。
騒音の暴力はもうなく、ネオンの光りだけが明るい。そこを突っ切ろうとすると、高木老人にぱったり出逢った。
「やあ、これはこれは、珍らしいところで……。」
なにが珍らしいものか。珍らしいのは先様のことだ。更に珍らしいことには、高木老人は酔っていて上機嫌である。
「わたしは、今日はとても嬉しい。も少し飲みましょう。どこか、君の知ってるうちに連れて行きなさい。」
既にだいぶはいってるらしい。
「いや、わたしはダンスはやらない。キャバレーも好まない。どこかこう、静かなところがよろしい。