Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんきろう

蜃気楼

芥川 竜之介

Lesen Sie 蜃気楼 (しんきろう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.624 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

二

「さあね。……しかし兎に角この人は混血児だったかも知れないね。」

僕はK君に返事をしながら、船の中に死んで行った混血児の青年を想像した。彼は僕の想像によれば、日本人の母のある筈だった。

「蜃気楼か。」

O君はまっ直に前を見たまま、急にこう独り語を言った。それは或は何げなしに言った言葉かも知れなかった。が、僕の心もちには何か幽かに触れるものだった。

「ちょっと紅茶でも飲んで行くかな。」

僕等はいつか家の多い本通りの角に佇んでいた。家の多い? ――しかし砂の乾いた道には殆ど人通りは見えなかった。

「K君はどうするの?」

「僕はどうでも、………」

そこへ真白い犬が一匹、向うからぼんやり尾を垂れて来た。

二

K君の東京へ帰った後、僕は又O君や妻と一しょに引地川の橋を渡って行った。今度は午後の七時頃、――夕飯をすませたばかりだった。

その晩は星も見えなかった。僕等は余り話もせずに人げのない砂浜を歩いて行った。砂浜には引地川の川口のあたりに火かげが一つ動いていた。それは沖へ漁に行った船の目じるしになるものらしかった。

浪の音は勿論絶えなかった。が、浪打ち際へ近づくにつれ、だんだん磯臭さも強まり出した。