Japanische Klassiker mit Furigana
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しじみだに
蜆谷
山本 周五郎
Lesen Sie 蜆谷 (しじみだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.957 Zeichen · 28 Bildschirme
困るよ」
げん女は聞いてはいなかった、大きくみひらいた眼であらぬほうをみつめ、手をわなわなと震わせながら、口の内でただ弥之助弥之助と呟やくばかりだった。……庄屋の沼田六平次、名主の源兵衛、地子総代の久八、それに村の若い者が五人ついて、雪どけのぬかる道をまず高宮の陣屋へいった、するとそこで身分や名を書き取られ、警護の者が十人ついて佐和山へ送られたが、そのときげん女には、「老いの身に遠道は苦しかろう」と、馬を与えられた。庄屋や名主たちには、意外なことで、それなら弥之助が捕まったのではなかったのかという疑いが起こった。……佐和山へ着いたのは日ぐれ前である、城は石田氏滅亡のとき炎上し、城下もほとんど焼き払われたが、井伊直政が就封してから仮城が築かれ、町家もどしどし建てられて、二年まえに劣らないにぎわいをみせていた。彼らは城内の侍長屋のような所で一夜を明かした。
翌朝はやく呼出しがあり、げん女と三人の村役は吟味所の庭へつれてゆかれた。板屋造りの仮普請だが、城中のことで威儀きびしく、庭まわりには槍を持った足軽が警護に立った。彼らが設けの蓆に坐るとすぐ、二人の番卒につれられて弥之助が出て来た。