Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
大勢に邪魔されて、じれに焦れたかれは、わが手に残っている貝殻を四郎兵衛のうしろから投げ付けると、狙いは狂ってそのそばにうろうろしているお杉の右の頬にあたった。あっといって顔を押える母の眼の下からも血がにじみ出した。
「お安さん。気でも違ったのじゃないか。」と、そこらの女たちは騒いだ。子細の知れないこの乱暴狼藉については、お安という女が突然発狂したとでも思うほかはなかった。
その噂が耳にはいったとみえて、お安は店の奥を睨みながら怒鳴った。
「あたしは気違いでも何でもない。あいつに恨みがあるから仇討をしただけの事だ。さあ、あたしの顔を覚えているだろう。表へ出て来い。」
言いながら奥へ跳り込もうとするのを、義助はまた押えた。
「まあ、静かにしても判るだろう。」
「ええ、判らないからこうするのだ。ええ、うるさい。お放しというのに……。」
かれの手にはまだ一つの貝殻が残っている。これをつかんだままで強く払いのけると、その貝殻が顔にあたって目をぶたれたか、鼻をぶたれたか、義助も顔をおさえて立ちすくんでしまった。こうなっては容赦はできない。駕籠屋四人は腕ずくでお安を取押えて、無理にとなりの店へ引摺って行った。