Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
こう申すと、みなさんは定めてお笑いになるかも知れませんが、わたくしはその時まったく怖かったのでございます。
死骸のまわりには大勢の人があつまっていましたが、唯がやがやと騒いでいるばかりで、その女がどこの誰だか、識っている者はないようでございます。自身番からも人が来て、御検視を願うのだとか言っていました。
叔父のところへ知らせてやれば、おそらく身許は判るだろうと思うのですけれど、うっかりしたことを言っていいか悪いか判りませんから、わたくしは急いで家へ帰って来て、母にその話をしますと、母も顔をしかめて考えていましたが、そんなことに係り合うと面倒だから、決してなんにも言ってはならないと戒めました。それでもなんだか気にかかるとみえて、母はまた考えながら起ちあがりました。
「おまえ、見違いじゃあるまいね。確かにきのうの女だろうね。」
「ええ、確かにきのうの人でした。」と、わたくしは受合うように言いました。
「それじゃ会津屋へ行って、叔父さんにそっと耳打ちをして来ようかねえ。」
母は思いきって出て行きました。そのうちに日も暮れてしまって、例の蚊いぶしの時刻になりましたが、わたくしは今夜もぼんやりして、ただ坐ったままでその女のことばかりを考えていました。