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Japanische Klassiker mit Furigana

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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme

Aozora Bunko

お熊が朝の仕事を片付けて、それから牡丹餅を買いに出ると、店は案外の混雑で、もう売切れであると断られた。お熊は手をむなしくして帰って来ると、延津弥は顔をしかめた。こうなると自然の人情で、どうしても牡丹餅を食わなければならないように思われて来た。世間の人たちがそれほど競って食うなかで、自分ひとりが食わなかったならば、どんな禍いを受けるかも知れないと恐れられた。

「ほかにどこか売っている家はないかねえ。」

金龍山の牡丹餅は有名であるが、ここはしょせん駄目であろうと、かれらも最初から諦めていたのである。しかもこの上はともかくも金龍山へ行ってみて、そこでお断りを食ったらば、広小路の方へ行って探してみたらよかろうということになった。

「暑いのにお気の毒だが、急いで行って来ておくれよ。また売切れてしまうと困るから……。」と、延津弥は頼むように言った。

「はい。行ってまいります。」

お熊は直ぐに出て行った。けさももう五つ半(午前九時)過ぎで、聖天の森では蝉の声が暑そうにきこえた。正直な小女は日傘もささずに、金龍山下瓦町の家をかけ出して、浅草観音堂の方角へ花川戸の通りを急いで来ると、日よけの扇を額にかざした若い男に出逢った。