Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
いなごのだいりょこう
蝗の大旅行
佐藤 春夫
Lesen Sie 蝗の大旅行 (いなごのだいりょこう) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.317 Zeichen · 7 Bildschirme
赤帽のあとから来た紳士は貧相な痩せた人であるが、この人は腰をかけないで太った紳士の前に立ったままつづけさまに幾つもお辞儀をしていた。この人もきっと会社の人で、上役が旅行をするのを見送りに来たのに違いない。これはこの二人の風采や態度を見くらべてもよく解る。太った紳士が金ぐさりのぶらさがったおなかを突き出して何か一言いうと、痩せた紳士はきっと二つつづけてお辞儀をした。汽車は五分間停車と見えてなかなか動き出さない。二人の紳士はもう言うことがなくなったらしいが、痩せた方の人は発車の合図があるまではそこに立っているつもりと見えて、車室の床の上に目を落したまま、手持無沙汰に彼の麦稈帽子を弄んでいた。
僕は先刻からこの二人の紳士を見ていて、それからこの痩せた紳士が慰みにいじっている麦稈帽子に何心なく目を留めたが、見ると、この帽子の頭の角のところに一疋の蝗がじっと縋っていた。それは帽子が動いても別にあわてる様子とてもなくじっとしている。今に、この痩せた紳士が自分の帽子にいる虫に気がついて、払い落しはしないかと、僕はなぜともなく蝗のためにそれが心配だったが、帽子の持主は一向気がつかないらしかった。