Japanische Klassiker mit Furigana
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ちょうのえ
蝶の絵
久生 十蘭
Lesen Sie 蝶の絵 (ちょうのえ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.644 Zeichen · 49 Bildschirme
こちらの意図がわかると、枝をゆすって暴れるが、間もなく、ドサリと樹が倒れる。母猿は子猿を抱えて立ちむかってくるが、目つぶしを食わされ、網をかぶされて、地べたへころがされる……そこを、乳の下を目がけて、銃剣でグサリと突くんだ。母猿は片手で子供たちをひきよせ、片手でまわりの草をむしって、胸の創口へおしこむ。そうして、絶望的なようすで、血のついた手を嗅いでみる……母猿の臨終の動作は、おそろしいほど人間に似ているんだ。あんな良心をおびやかす狩もすくない……猿のほうは利口で、礼節があって、ときには、道徳的にさえ見える。われわれ人間のほうは、低蒙で野蛮で、垢だらけになって、眼ばかりギョロギョロさせ、一枚のガネモの葉のやり奪りから、すごい斬りあいをやる……猿を殺すにしても、その残忍さときたら、お話にならない。見ていると、人間が猿を殺しているんじゃなくて、猿が人間を殺しているような、へんな気がしてくる。他人のことじゃない。顔に猿の血をつけたまま、猿汁をつくっているところなど、われながら、人間だなんて思えない。一日ごとに、動物に近くなって行く経過が、はっきりとわかって、この分じゃ、たとえ生き残っても、二度と人間社会へ帰って行けないだろうという自覚と絶望で、気がちがいかけたことがある」