Japanische Klassiker mit Furigana
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ちょうのえ
蝶の絵
久生 十蘭
Lesen Sie 蝶の絵 (ちょうのえ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.644 Zeichen · 49 Bildschirme
「山川さんでしたか……ろくなものもございませんが、ごらんねがいましょう」
小径づくりになった飛石を踏み、棕櫚繩を結んで買いとる庭木に目じるしをつけながら、地境のほうへ行くと、塀際の鉄棒をはめた飼箱のなかに、二歳くらいの猿の子供が、からだじゅうに乾いた泥や藁屑をこびりつかせ、所在なさそうに立膝で坐っていた。
山川は足をとめてチラと一瞥すると、ジャングルで猿を殺して食ったことでも思いだしたのか、よそ目にもわかるほど嫌な顔をしたが、いつもの弱気で、
「オランウータンがいますね」
と相手の気をひくようなことをいった。
「オランウータンとゴリラは、日本の動物園にいたことはありませんでした」
「あれは終戦の三月ほど前に、内地に帰ることに内定していたのだそうで、東条さんにあげるつもりで燃料廠の船で先に送りだしたものらしい。燃料廠から、荷物がついているから取りに来いというので行ってみましたら、こいつが出てきたのには、私もおどろきました」
猩々の子供は胸のあたりを掻きながら立ってきて、鉄棒につかまってしげしげと山川を見ていたが、長い毛の生えた腕をつきだし、愛想をするように山川の肩に手をかけた。