Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちょうのえ

蝶の絵

久生 十蘭

Lesen Sie 蝶の絵 (ちょうのえ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.644 Zeichen · 49 Bildschirme

Aozora Bunko

「こいつは、一流みたいな飲みかたをする。どこで、おぼえたんだ。まさか、ヨーロッパへ戦争に行ったわけでもあるまい。ふしぎなやつだね」

と岩城がいった。笠原は山川の顔を、と見こう見していたが、

「山川は、六年も戦争に行っていたというけど、ちっとも変っていないね。痛めつけられたようなところは、どこにもないじゃないか」

と呆れたようにいった。

水に晒したような絖のたつ白い皮膚は、どこといって日焼けもせず、華奢な手は、依然として敏感そうに、すらりとしたかたちを保っている。眼の艶もそのまま、声もそのまま。戦争は別にしても、歳月の腐蝕を受けずに、どうしてむかしのままの風姿を持続することができたのか、まず、それがふしぎだった。

「おれの友達なんだが、現地へ着くが早いか、敵前逃亡をして、終戦後、軍法会議と戦時特別刑法が廃止になるのを見さだめてから、悠々とあらわれてきたのがいる……兵科はなんだったんだ、そんな生っ白い顔でいられるというのは」

「高射砲隊……ひどい戦闘もしたが、ともかく運がよかった。終戦は、ニューギニアのカイマナだったが、あまり奥へ逃げこんじゃって、二年も終戦を知らなかった。