Japanische Klassiker mit Furigana
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はえおとこ
蠅男
海野 十三
Lesen Sie 蠅男 (はえおとこ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.129 Zeichen · 237 Bildschirme
彼は寝不足の充血した目をこすりながら、起きあがった。そして丹前を羽織ると、縁側に出て、雨戸をガラガラと開いた。とたんに彼は、狆のように顔をしかめて、
「おう、臭い。へんな臭いがする」
と吐きだすように云った。
前の往来で、臭評定をしていた近所のうるさ方一同は、突然ガラガラと開いた雨戸の音に愕いて、ハッとお喋りを中止したが、帆村が自分たちと同じように鼻をクンクンいわせているのを見上げるや、一せいにニヤニヤ笑いだした。
「お客さん。怪ったいな臭がしとりますやろ」
「おう。これは何処でやっているのかネ。ひどいネ」
「さあ何処やろかしらんいうて、いま相談してまんねけれど、ハッキリ何処やら分らしめへん。――お客さん、これ何の臭や、分ってですか」
「さあ、こいつは――」
とはいったが、帆村はあとの言葉をそのまま嚥みこんだ。そして彼は帯を締めなおすと、トントンと階段を下りて、玄関から外に出た。
「えらい早うまんな。お散歩どすか」
奥から飛んで出てきた仲働きのお手伝いさんが、慌てて宿屋の焼印のある下駄を踏石の上に揃えた。
「ああ、この辺はいつもこんな臭いがするところなのかネ」