Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こわく

蠱惑

豊島 与志雄

Lesen Sie 蠱惑 (こわく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.765 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

――私がかの男を初めて見たのは決してこのカフェーでではない。然しじっと見つめてやったのはその室でなんだ。

私は一体にまん円いものが好きなんだ。それは可愛いい魂を持ってるからだ。じっと見つめていると、一つの中心点を定めておとなしく上品にくるくると廻転しはじめるからだ。で私の席は何時も奥の円い卓子にきまっていた。

かの男は何時も私の卓子と並んだ四角い卓子に着いた。両足をきちんと揃えて、室の中に背中を向け、両手を組んでじっと薄暗い隅を見つめていた。彼は私と同じようなラクダのマントを着、中折帽で深くその額を隠していた。然しその頭が横に大きく、その額が恐ろしく凸出していることを私は明かに見て取った。

私の所から丁度彼の掛けている向うに一つの窓があった。それは通りに面して開けられた小さい長方形の窓で、灰色がかった緑色の羅紗のカーテンが何時も引かれていた。私はその窓を見つめ乍ら、急行列車の夜の窓を想った。それから私は彼の横顔に眼を移した。非常に美しい頬を彼は持っていた。

私は彼を前に幾度も見たことが確にある。少くともそのカフェーで前に一、二度見たことがあった。