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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

Lesen Sie 血ぬられた懐刀 (ちぬられたかいとう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.586 Zeichen · 71 Bildschirme

Aozora Bunko

あの時妾はまあどんなに、嬉しくも恥しくも思ったことか。『妾は幸福でござります。妾も貴郎様をお愛しします』と、茫とした声でお答えしたはずだ」

一本の桜の老木があった。木洩れの月光に浮き出して、満開の花が綿のように、森の天井を染めている。

その桜の木へ障わったが、萩野は幹へ額をあてた。

「この桜の花の下で、行末のことを語り合い、あのお方の熱い唇を、はじめて額へ受けたことがある。昨日のように思われるが、やはり一年の昔だった」

松の巨木が聳えている、幹に月光が斑を置いていた。

その幹へ萩野は寄りかかったが、袂で顔を蔽うようにした。にわかに体が縮まったのは、根元へうずくまったからであろう。しばらくの間は身動きもしない。何かを思い詰めているらしい。ただ肩ばかりが顫えている。いぜんとして泣いているからであろう。

やがて心を定めたかのように、萩野はゆるゆると立ち上ったが、腰の辺りを探り出した。

と、紐がクルクルと解けた。

仰ぐように顔を上向けて、松の下枝へ眼をやったが、片手を上げて紐を投げた。

松の枝へかかって下った紐を、両手で握って引いたのは、縊れて死のうとするのでもあろう。