Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
飯塚家へ帰るということは、彼にとっては喜びであった。恋人の栞と逢うことであるから。過ぐる夜、あの屋敷の庭で、純情の処女、栞と、手を取り交わして以来、栞が、何んと烈しく、一本気に、頼母を愛し出したことか。その愛の烈しさに誘われて、頼母も、今は、燃えるように、栞を愛しているのであった。その栞と逢えるのだ! 頼母は幸福で胸が一杯であった。武蔵屋での苦闘と、三日間左門を探し廻った辛労とで、頼母は少し痩せて見えた。頤など細まり、張っていた肩など、心持ち落ちたように見えた。
「や、これは!」
と、頼母は、納屋の前へさしかかり、何気なく窓を見上げた時、驚きの声をあげて足を止めた。窓にも陽があたっていて、明るかったが、納屋の内部は暗いと見え、窓の向こう側は闇であった。その闇を背後にして、明るい窓外に向き、一つの男の首級が、頼母の方へ顔を向けているではないか。陽のあたっている窓の枠を、黄金色の額縁とすれば、窓の内部の闇は、黒一色に塗りつぶされた背景であり、そういう額の面に、男の首級一個が、生白く描かれているといってよかった。首級は、乱れた髪を額へ懸け、眼を閉じ、無念そうに食いしばった口から幾筋も血を引いていた。