Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
と、栞は叫ぶように云い、父親が、正気に返ったらしいのに狂喜し、のめるように膝で進み、薪左衛門の膝へ取り縋った。
「そのお顔は! そのお声は! ……おおおお、お父様、すっかり正気の人間に! ……」
いかさま、ほんのさっきまでは、薪左衛門の顔は、狂人特有の、顰んだ眉、上擦った眼、食いしばった口、蒼白の顔色、そういう顔だったのに、何んと現在の顔は、のびのびとした眉の、沈着いた眼の、穏かに軽く結んだ口の、尋常の人の容貌に返っているではないか。これはどうしたことなのであろう? 奇蹟的事件にぶつかった時、人は往々、濁った気持ちや、狂った精神を、本来の正気に戻すことがあるものであるが、薪左衛門にとっては、天国の剣の出現は、その奇蹟的事件といっていいらしく、そのため、烈しい感動を受け、日頃の狂疾が、一時的に恢復したのかもしれない。
「ナニ正気の人間に?」
と、薪左衛門は、栞の言葉を、不審しそうに聞き咎めた。
「栞や、正気の人間とは?」
「おお、お父様お父様、あなた様は、長らくの間、ご乱心あそばしておいでなされたのでございます」
「乱心?」
「はい、過ぐる年、松戸の五郎蔵という、博徒の親分が参りまして、お父様と、お話しいたしましてございますが、その時、突然お父様には、『汝、来栖勘兵衛、まだこの俺を苦しめるのか!』