Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Lesen Sie 行人 (こうじん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 224.801 Zeichen · 452 Bildschirme

Aozora Bunko

「兄さんはなぜまた今日までその話を為ずに黙っていたんです」と自分は最後に兄に聞いた。兄は苦い顔をして、「する必要がないからさ」と答えた。自分は様子によったらもっと肉薄して見ようかと思っているうちに汽車が着いた。

十一

停車場を出るとすぐそこに電車が待っていた。兄と自分は手提鞄を持ったまま婦人を扶けて急いでそれに乗り込んだ。

電車は自分達四人が一度に這入っただけで、なかなか動き出さなかった。

「閑静な電車ですね」と自分が侮どるように云った。

「これなら妾達の荷物を乗っけてもよさそうだね」と母は停車場の方を顧みた。

ところへ書物を持った書生体の男だの、扇を使う商人風の男だのが二三人前後して車台に上ってばらばらに腰をかけ始めたので、運転手はついに把手を動かし出した。

自分達は何だか市の外廓らしい淋しい土塀つづきの狭い町を曲って、二三度停留所を通り越した後、高い石垣の下にある濠を見た。濠の中には蓮が一面に青い葉を浮べていた。その青い葉の中に、点々と咲く紅の花が、落ちつかない自分達の眼をちらちらさせた。

「へえーこれが昔のお城かね」と母は感心していた。