Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじん
行人
Lesen Sie 行人 (こうじん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 224.801 Zeichen · 452 Bildschirme
とつけ足して室へ帰った。
下女はいつ気がついたか、蚊帳の穴を針と糸で塞いでいた。けれどもすでに這入っている蚊はそのままなので、横になるや否や、時々額や鼻の頭の辺でぶうんと云う小い音がした。それでもうとうとと寝た。すると今度は右の方の部屋でする話声で眼が覚めた。聞いているとやはり男と女の声であった。自分はこっち側に客は一人もいないつもりでいたので、ちょっと驚かされた。しかし女が繰返して、「そんならもう帰して貰いますぜ」というような言葉を二三度用いたので、隣の客が女に送られて茶屋からでも帰って来たのだろうと推察してまた眠りに落ちた。
それからもう一度下女が雨戸を引く音に夢を破られて、最後に起き上ったのが、まだ川の面に白い靄が薄く見える頃だったから、正味寝たのは何時間にもならなかった。
十五
三沢の氷嚢は依然としてその日も胃の上に在った。
「まだ氷で冷やしているのか」
自分はいささか案外な顔をしてこう聞いた。三沢にはそれが友達甲斐もなく響いたのだろう。
「鼻風邪じゃあるまいし」と云った。
自分は看護婦の方を向いて、「昨夕は御苦労さま」と一口礼を述べた。