Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆくえふめいのしょじょさく
行方不明の処女作
宮本 百合子
Lesen Sie 行方不明の処女作 (ゆくえふめいのしょじょさく) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 2.916 Zeichen · 6 Bildschirme
活字となって雑誌に発表された処女作の前に、忘れることの出来ない、もう一つの小説がある。
私は小学校の一二年の頃から、うちにあった小さいオルガンを弾きおぼえ、五年生時分には自分の好きなのは音楽なのであろうと思っていた。ところが、段々文字がよめ、文章を書くことに興味を覚えてから、音楽もすきだが文学はもっと身近いものとして感じられるようになって来た。そして、恐らくは誰でも一度経験するであろう濫読、濫写、模倣の時代がはじまった。
母が読書好きであった関係から、家の古びた大本箱に茶色表紙の国民文庫が何冊もあって、私は一方で少女世界の当選作文を熱心に読みながら、ろくに訳も分らず竹取物語、平家物語、方丈記、近松、西鶴の作品、雨月物語などを盛によんだ。与謝野晶子さんの現代語訳源氏物語が出版されたのは、正確にはいつ頃のことであったか。今はっきり思い出せないが、私はそれを真似て、西鶴の永代蔵の何かを口語体に書き直し、表紙をつけ、綴じて大切に眺めたりした覚がある。
小学校六年の夏休みのことであった。母が嫁入りの時持って来てふだんは使われない紫檀の小机がある。それを親たちの寝所になっていた六畳の張出し窓のところへ据えて、頻りに私が毛筆で書き出したのは、一篇の長篇小説であった。