Japanische Klassiker mit Furigana
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がいていのようこうろ
街底の熔鉱炉
佐左木 俊郎
Lesen Sie 街底の熔鉱炉 (がいていのようこうろ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.879 Zeichen · 14 Bildschirme
一
房枝の興奮は彼女の顔を蒼白にしていた。こんなことは彼女にとって本当に初めてであった。その出張先が自分の家と同じ露地の中だなんて。彼女は近所の侮蔑的な眼が恐ろしかった。しかもそれが同じ軒並みのすぐ先なのだから。彼女はすぐそのまま自分の家に帰って行く気はしなかった。彼女は日頃から親しくしている小母さんの家へ裏口から這入った。小母さんの家は、雇われて行った家の一軒置いて隣になっていた。小母さんは内職の造花を咲かせていた。
「小母さん! お隣のお隣は、何を職業にしているの?」
「お隣のお隣? 楽そうだろう? 泥棒をしているんだって。」
「泥棒? 厭あな小母さん! そんな職業があるの? 泥棒だなんて……」
房枝は微笑んで袂で打つ真似をした。
「そりゃ、不景気だもの、何だって、出来ることはしなくちゃ。泥棒だって何だって、食って行ける者はいいよ。」
「でも、少しおかしかない? 泥棒だなんて……」
「職業なら、何もおかしいこと無いじゃない? 食って行くためなら、どんなことだって、しなくちゃならない時世なんだもの。」
真面目な顔で小母さんは造花を咲かせ続けた。紫の花。