Japanische Klassiker mit Furigana
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あかいステッキ
赤いステッキ
壺井 栄
Lesen Sie 赤いステッキ (あかいステッキ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.482 Zeichen · 23 Bildschirme
家にいて毛糸を編むお母さんの姿よりほかに、克子はちがった母親の姿を知らないのであろう。お母さんはそっと克子から手を離した。だまって家の方へ歩いていく克子のうしろ姿は目の見えない子とは思えないたしかな足どりであった。少し離れてお母さんは克子の後につづいた。一足もまちがいのない場所で克子は家の裏口に立ち、いきおいこんでガラス戸を開けるなり、
「お母たん、よそのばあやんが蜜柑くれたあ」
と、大声で土間を表の方へかけぬけていった。お母さんはわざと井戸端に立ちどまり、
「そうかあ、よかったなあ」
と、そこから答えた。ゆっくり近よっていくと、克子は手もとを見ずに、心もちそっぽを向いてその蜜柑をむきながら、
「よそのおばやんがのう、克ちゃんこれあげら、いうて蜜柑くれたんで」
と、そこだけ内証声でえくぼを浮かべる克子、それをめくらでないとどうしていいきれよう。めくらであればこそ、知らず知らず外へむかってかまえているような毎日である。だが、こんなこともあった。
裏口の方で大勢の足音といっしょに、子供たちのめいめいの声がもつれあって、
「克ちゃんのばあやん」と呼びかけられた。そこに克子のいないことはすぐにわかっていた。