Japanische Klassiker mit Furigana
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あかいて
赤い手
国枝 史郎
Lesen Sie 赤い手 (あかいて) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.057 Zeichen · 21 Bildschirme
俺は真物とばかり思っていた」そして彼は鉢を調べた。「随分と厚い硝子だ。これなら少し位の事では毀れっこない。けれど、こんなに水が一ぱい入ってるんじゃ、溢さずに動かすのは一寸六ヶ敷いな」さて、問題は鉢を動かすことだった。鉢の縁を持てば何うしても手袋を濡らしてしまう。かと云って、手袋なしでやれば指紋がついてしまう。そこで遂に片方だけ手袋をとり、指紋がつくのを防ぐ為めにはハンカチを用うることにした。そしてハンカチを巻きつけた手で金魚鉢の縁を掴み、一方の手で底を支えながら邪魔にならない所で置き換えた。それから水のついた指先を拭うと、その濡れたハンカチを衣嚢に収めた。
仕事は余りに楽過ぎて彼の器用な小手先を使う機会のないのは如何にも残念だった、でも宵から今に至るまで手筈は万事好都合に運んでいた。彼は割合に目方のある彫像をカンバス製の袋に入れると、それを紐でしっかりと結え付けた。
「これで五千弗とはすまねえな」彼の顔には満足そうな微笑が漂った。
彼は扉の方に向直って電燈のスイッチを捻ろうとした。と、その時、みしッと云う幽かな音がしたので彼は思わずぎょっとなった。