Japanische Klassiker mit Furigana
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あかいかしゃ
赤い貨車
宮本 百合子
Lesen Sie 赤い貨車 (あかいかしゃ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.168 Zeichen · 71 Bildschirme
いままで、その上に毎晩ナースチャが寝て来た箱のなかには、まだいくらか古着があったが、どれも小さくなったり、きれていたり、役に立つのはなかった。
シューラが、箱の底をほじくって、すり切れた、誰かの古い狐の皮を引ずり出した。
「いいもの! いいもの! さあ、ナーシェンカ、これもつめといでよ」
「おやめよ」
「なぜさ! モスクワは寒いよ、ホラ!」
狐の皮を自分の頸にまきつけ、シューラはしなをしてナースチャのぐるりを歩きまわった。
「いい襟巻だよ」
相手にならず、洗ってあるのや洗ってないのや靴下をつかんで麻袋につめこんでいたナースチャは、溜息をつき、手の甲で額をこすり箱にもたれて坐ってしまった。ややしばらくそのかたちのナースチャを眺めていたシューラは、狐の皮をぬぎ、うしろ手のままそろりと箱のふちへずりのぼった。ナースチャは動かぬ。シューラはよほど経ってからこごんで、小さい声でよびかけた。
「ナーシェンカ」
「…………」
「お前……ねえナーシェンカ、こわくない? 行っちゃうの……」
「…………」
「ね、ナーシェンカ、こわくない?」
箱からぶら下っているシューラの骨っぽい少女の脛が、いきなりナースチャの若々しい腕で抱きしめられた。