Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.384 Zeichen · 41 Bildschirme
一
一
その門の前に来たとき、保本登はしばらく立停って、番小屋のほうをぼんやりと眺めていた。宿酔で胸がむかむかし、頭がひどく重かった。
「ここだな」と彼は口の中でつぶやいた、「小石川養生所か」
だが頭の中ではちぐさのことを考えていた。彼の眼は門番小屋を眺めながら、同時にちぐさのおもかげを追っていたのだ。背丈の高い、ゆったりしたからだつきや、全身のやわらかいながれるような線や、眼鼻だちのぱちっとした、おもながで色の白い顔、――ちょっとどこかに手が触れても、すぐに頬が赤らみ、眼のうるんでくる顔などが、まるで彼を招きよせでもするように、ありありと眼にうかぶのであった。
「たった三年じゃないか」と彼はまたつぶやいた、「どうして待てなかったんだ、ちぐさ、どうしてだ」
一人の青年が来て、門のほうへゆきながら、振向いて彼を見た。服装と髪のかたちで、医師だということはすぐにわかる。登はわれに返り、その青年のあとから門番小屋へ近づいていった。彼が門番に名を告げていると、青年が戻って来て、保本さんですかと問いかけた。彼はうなずいた。
「わかってる」と青年は門番に云った、「おれが案内するからいい」