Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.384 Zeichen · 41 Bildschirme
そして登に会釈して、どうぞと気取った一揖をし、並んで歩きだした。
「私は津川玄三という者です」と青年があいそよく云った、「あなたの来るのを待っていたんですよ」
登は黙って相手を見た。
「ええ」と津川は微笑した、「あなたが来れば私はここから出られるんです、つまりあなたと交代するわけなんですよ」
登は訝しそうに云った、「私はただ呼ばれて来ただけなんだが」
「長崎へ遊学されていたそうですね」と津川は話をそらした、「どのくらいいっておられたんですか」
「三年とちょっとです」
登はそう答えながら、三年、という言葉にまたちぐさのことを連想し、するどく眉をしかめた。
「ここはひどいですよ」と津川が云っていた、「どんなにひどいかということは、いてみなければわかりませんがね、なにしろ患者は蚤と虱のたかった、腫物だらけの、臭くて蒙昧な貧民ばかりだし、給与は最低だし、おまけに昼夜のべつなく赤髯にこき使われるんですからね、それこそ医者なんかになろうとした自分を呪いたくなりますよ、ひどいもんです、まったくここはひどいですよ」
登はなにも云わなかった。
――おれは呼ばれて来ただけだ。