Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちょうかきんむ

超過勤務

山本 周五郎

Lesen Sie 超過勤務 (ちょうかきんむ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.619 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

彼の眼から涙がこぼれ出る。自分では気がつかないとみえ、それをこぼれ出るままにして、またせかせかとあるきまわる。

「もう充分だ、おれにだって生きる権利はある、おれにだって自分の人生があり、自分の人生を生きる権利があるはずだ」彼は意識せずにズボンのポケットからハンカチを出し、眼をふきながら云う、「――ここにいるこのおれは、本当のおれ自身じゃない、これは現実じゃあない悪夢だ、おれはここから脱出する、おれは自分の人生をとり戻すぞ、デイト、ペッティング、もう超過勤務はお断わりだ」

彼はデスクへ歩み寄り、その上にある帳簿や伝票の束や書類などを、両手でさっと払いのけた。それらは賑かな音を立てて床へ落ち、彼は鉛筆やペン軸を「えい、えい」と叫びながら折って捨てる。万年筆も手に取ったが、それは高価だと気づいたのか、折るのをやめてデスクの上へ戻し、こんどは床の上に積み重ねてあるカタログや、外国雑誌やパンフレットの類を、手当りしだいに取って引き裂き、引き千切ってあたりに投げ散らす。

「えい、どうだ、えい、これでわかったか、もう止めてもだめ、なだめてもだめだ、おれは出発だ」