Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
洗湯で年頃の娘が湯を汲んでくれる、あんな嫁がいたらと昔を偲ぶ。これでは生きているのが苦痛である。それも子福者であるなら一人なくなっても、あとに慰めてくれるものもある。しかし親一人子一人の家族が半分欠けたら、瓢箪の中から折れたと同じようなものでしめ括りがつかぬ。軍曹の婆さんではないが年寄りのぶら下がるものがない。御母さんは今に浩一が帰って来たらばと、皺だらけの指を日夜に折り尽してぶら下がる日を待ち焦がれたのである。そのぶら下がる当人は旗を持って思い切りよく塹壕の中へ飛び込んで、今に至るまで上がって来ない。白髪は増したかも知れぬが将軍は歓呼の裡に帰来した。色は黒くなっても軍曹は得意にプラットフォームの上に飛び下りた。白髪になろうと日に焼けようと帰りさえすればぶら下がるに差し支えはない。右の腕を繃帯で釣るして左の足が義足と変化しても帰りさえすれば構わん。構わんと云うのに浩さんは依然として坑から上がって来ない。これでも上がって来ないなら御母さんの方からあとを追いかけて坑の中へ飛び込むより仕方がない。
幸い今日は閑だから浩さんのうちへ行って、久し振りに御母さんを慰めてやろう? 慰めに行くのはいいがあすこへ行くと、行くたびに泣かれるので困る。