Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
浩さんは松樹山の塹壕からまだ上って来ないがその紀念の遺髪は遥かの海を渡って駒込の寂光院に埋葬された。ここへ行って御参りをしてきようと西片町の吾家を出る。
冬の取っ付きである。小春と云えば名前を聞いてさえ熟柿のようないい心持になる。ことに今年はいつになく暖かなので袷羽織に綿入一枚の出で立ちさえ軽々とした快い感じを添える。先の斜めに減った杖を振り廻しながら寂光院と大師流に古い紺青で彫りつけた額を眺めて門を這入ると、精舎は格別なもので門内は蕭条として一塵の痕も留めぬほど掃除が行き届いている。これはうれしい。肌の細かな赤土が泥濘りもせず干乾びもせず、ねっとりとして日の色を含んだ景色ほどありがたいものはない。西片町は学者町か知らないが雅な家は無論の事、落ちついた土の色さえ見られないくらい近頃は住宅が多くなった。学者がそれだけ殖えたのか、あるいは学者がそれだけ不風流なのか、まだ研究して見ないから分らないが、こうやって広々とした境内へ来ると、平生は学者町で満足を表していた眼にも何となく坊主の生活が羨しくなる。門の左右には周囲二尺ほどな赤松が泰然として控えている。