Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅみのいでん

趣味の遺伝

夏目 漱石

Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme

Aozora Bunko

女なら御母さんか知らん。余は無頓着の性質で女の服装などはいっこう不案内だが、御母さんは大抵黒繻子の帯をしめている。ところがこの女の帯は――後から見ると最も人の注意を惹く、女の背中いっぱいに広がっている帯は決して黒っぽいものでもない。光彩陸離たるやたらに奇麗なものだ。若い女だ! と余は覚えず口の中で叫んだ。こうなると余は少々ばつがわるい。進むべきものか退くべきものかちょっと留って考えて見た。女はそれとも知らないから、しゃがんだまま熱心に河上家代々の墓を礼拝している。どうも近寄りにくい。さればと云って逃げるほど悪事を働いた覚はない。どうしようと迷っていると女はすっくら立ち上がった。後ろは隣りの寺の孟宗藪で寒いほど緑りの色が茂っている。その滴たるばかり深い竹の前にすっくりと立った。背景が北側の日影で、黒い中に女の顔が浮き出したように白く映る。眼の大きな頬の緊った領の長い女である。右の手をぶらりと垂れて、指の先でハンケチの端をつかんでいる。そのハンケチの雪のように白いのが、暗い竹の中に鮮かに見える。顔とハンケチの清く染め抜かれたほかは、あっと思った瞬間に余の眼には何物も映らなかった。