Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ろじょう
路上
Lesen Sie 路上 (ろじょう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.539 Zeichen · 87 Bildschirme
彼はその部屋へ大きな西洋机や安楽椅子の類を持ちこんで、見た眼には多少狭苦しいが、とにかく居心は悪くない程度の西洋風な書斎を拵え上げた。が、書斎を飾るべき色彩と云っては、ただ書棚を埋めている洋書の行列があるばかりで、壁に懸っている額の中にも、大抵はありふれた西洋名画の写真版がはいっているのに過ぎなかった。これに常々不服だった彼は、その代りによく草花の鉢を買って来ては、部屋の中央に据えてある寄せ木の卓子の上へ置いた。現に今日も、この卓子の上には、籐の籠へ入れた桜草の鉢が、何本も細い茎を抽いた先へ、簇々とうす赤い花を攅めている。……
須田町の乗換で辰子と分れた俊助は、一時間の後この下宿の二階で、窓際の西洋机の前へ据えた輪転椅子に腰を下しながら、漫然と金口の煙草を啣えていた。彼の前には読みかけた書物が、象牙の紙切小刀を挟んだまま、さっきからちゃんと開いてあった。が、今の彼には、その頁に詰まっている思想を咀嚼するだけの根気がなかった。彼の頭の中には辰子の姿が、煙草の煙のもつれるように、いつまでも美しく這い纏っていた。彼にはその頭の中の幻が、最前電車の中で味った幸福の名残りのごとく見えた。