Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おどるちへいせん

踊る地平線(上)

谷 譲次

Lesen Sie 踊る地平線(上) (おどるちへいせん) von 谷 譲次 (たにじょうじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 168.926 Zeichen · 332 Bildschirme

Aozora Bunko

たましいを掻きりたいほど退屈なパアム街のなかほどに、109という番号字の剥げかかった茶煉瓦の立体が、赤く枯れた蔦をいっぱいに絡ませて、よろめきながら街路にむかって踏みこたえている。それだって同居人と日用品商人の手垢で黒くよごれた木の門から、呼鈴のこわれたままになっている入口のあいだには、芝生のかわりに赤土と石ころがあって、重病人のような林檎の樹の下に忘れな草が咲いていた。うしろの庭は塵埃すて場だった。そして朝晩はどの家からも不健康な料理油のにおいと赤んぼの泣声とが、五月の雨とともに街路に面する窓という窓のかあてんをそよがせていた。風雨に着色された木柵のところどころを、真あたらしい板で不器用に修繕したあとが、うすあかりのなかにまるで傷口のように生々しかった。塀にそって金いろの水蝋樹が芽をそろえていた。ことによると、雨を浴びたそのあざやかな黄が瓦斯灯の光線に反射して、それでこうも夜の室内が明るいのかも知れなかったが、この頃のロンドンは午後の九時十時がまだ夕ぐれの色なのだ。そのうえ三時にはもうぼうっとした朝の気が雨といっしょに青っぽく漂いわたって、牛乳配達の馬のひづめが地流れのする固い石畳を鳴らして過ぎる。