Japanische Klassiker mit Furigana
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おどるちへいせん
踊る地平線(下)
谷 譲次
Lesen Sie 踊る地平線(下) (おどるちへいせん) von 谷 譲次 (たにじょうじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.823 Zeichen · 283 Bildschirme
が、いくら呑気だからって、私たちほど忘れ物を商売にしてるようなのもあるまい。そのオリエンタル・ホテルででも、部屋を出る時は一かど落着いてすっかり検分したつもりだったにも係わらず小使の一人が動き出そうとしている私達の車窓へ葡萄牙で買った銀の煙草入れを届けてくれたし、帝国ホテルでだって、いよいよ鎌倉の自宅へ帰る段になって、勘定を済まして玄関で自動車を待っていると、そこへあたふたと部屋付きボウイが私の時計と彼女の帽子を持って駈けつけて来たくらいである。
この通り、自慢じゃないが、一年半に近い外遊中、私達が諸国各地のホテル・停車場・タキシ内――これが一番苦手だ――その他料理店等で置き忘れて来た色んな物品を価格に見積ると、決して馬鹿にならないものがある。なかんずく、その種品別にいたっては実に奇抜の到りで、ことに今考えても口惜しくて耐らないのは、芬蘭土の内地へ踏み込んだとき――まあ、止そう。愚痴をこぼしたってどうにもならないし、それに、この置き忘れ・紛失物の一件を並べ出すと、それだけで優に、生活の角度から見た全般にわたる旅行漫筆が出来上るくらいで、その土地々々に関する多少の描写の説明も必要だし、何よりも、いまここにその紙数もなければ場合でもない。