Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐんこくかようしゅう
軍国歌謡集
山川 方夫
Lesen Sie 軍国歌謡集 (ぐんこくかようしゅう) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.655 Zeichen · 80 Bildschirme
私は狼狽した。最後の歌が聞こえたのは七月の二日だった。それまでは、欠かさずに歌はつづいていた。私は毎夜その時刻には、本を読んだり級友のノートをうつしたり、展覧会の記録をとったりして下宿にかならずいることにしていたので、それにはまちがいはなかった。彼女が歌うのを止めないため、私は毎日わざわざ暑いのに窓を閉めて、なるべく彼女に不安をあたえぬよう気を配ってもいたのである。
歌は、十日たち、半月が経過しても、永遠の沈黙の中に消えたように二度と聞こえてはこなかった。夏休みになったせいだろうか? それとも娘は病気なのだろうか? 引越しをしてしまったのか? あれこれ理由を考えては、私は、考える自分に腹が立った。私もまた最近では、あの歌の主の存在を必要とし、あの歌声に恋情をもよおしているような気がしたのである。急に途切れたり小さくなったりして、私を意識して暗い道を迂回して行くあの娘の存在が、妙になつかしく、それがなくなったことがたえられぬほど淋しいのだ。私は思い切って窓を開けた。十時前後になると、その下の道を通る人かげに注意をした。でも、あの娘の姿は一度もその路地にあらわれなかった。