Japanische Klassiker mit Furigana
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てんき
転機
伊藤 野枝
Lesen Sie 転機 (てんき) von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.656 Zeichen · 67 Bildschirme
「ああそうでしょうね、あなたはまだ若いんだから。」
そう云ってM氏は妻君と顔見合わせてちょっと笑ってからいった。
「T翁という名前くらいはご存じでしょう?」
「ええ、知ってますわ。」
「あの人が熱心に奔走した事件なんです。その事件で問題になった土地なんです。」
「ああそうですか。」
私にもそういわれれば何かの書いたものでT翁という人は知っていた。義人とまでいわれたその老翁が、何かある村のために尽したのだということも朧ろ気ながら知っている。しかしそれ以上のくわしい事は何も知らなかった。
「実は今日その村の人が来ましてね、いろいろ話を聞いてみると実にひどいんです。何だか、とてもじっとしてはいられないので一つ出かけて行って見ようと思うのです。」
M氏は急に、恐ろしく興奮した顔つきをして、突然にそういって黙った。私には何の事だかいっさい分らなかったけれど、不断何事にも真面目なM氏のひと通りのことではないような話の調子に、まるで外れているのも済まぬような気がして、さぐるようにして聞いた。
「その村に、何かあったのですか?」
「実はその村の人たちが水浸りになって死にそうなんです。